エコノミストマネー:回復する米国個人消費 10年の成長率は5%台?
マーケット最前線 ワールドコンパス(エコノミストマネー2010年3月号より)ちょうど1年前、世界中が懸念したのは1929年に始まる大恐慌の再来だった。「100年に1度」という言葉が決まり文句となり、書店には、この不況が及ぼす影響について予言した本が山と積まれた。
米国の2009年のGDP(国内総生産)成長率はマイナス2・5%。リセッション(景気後退)の長さと落ち込み幅は戦後最長・最大になった。しかし、大恐慌時と比較すると、今回の不況はやはり軽いものだった。
三菱東京UFJ銀行経済調査室ニューヨーク駐在の勝藤史郎チーフエコノミストは「07年12月から始まった米国の不況の終了は09年6月」とみている。勝藤さんによると、大恐慌時のGDP成長率は30年から4年連続のマイナス、失業率は25%に達した。今回の失業率は10%台がピークで、物価の下落率も低い。
銀行の不良債権も同様に大恐慌時と比較すると、被害は軽い。35年の米銀行貸し出しに対する不良債権比率は4・8%。これに対し、国際通貨基金(IMF)による推計では、08年末が3・7%、10年末の推計は4・2%だ。今回の不況の方がやはり荷は軽い。
◇3D映画、電子書籍...... 米国で新たな成長の兆し
なぜ今回の不況が大恐慌の再来とならなかったのか。私は、弱気論者が住宅価格下落の経済負担を過大にみていたのでは、と考えている。
米国には1億3000万戸の住宅がある。その価値下落を含めて米国家計の正味資産は07年第3四半期から09年第1四半期までに17兆5000億ドルも減少した。これを、毎年1兆ドルの貯蓄で埋めるとしても17年かかる。もちろん、米国の消費減退は、他の国が束になっても埋めることはできないため、世界的な長期不況に陥る。家計が身の丈に合わない消費を繰り返して過剰な負債を抱え込んで苦しむ、いわゆる「家計のバランスシート調整」論である。
ところが、現実には米国の家計資産は09年初の48兆ドルの大底から反転上昇し、09年第3四半期には53兆4000億ドルに増加。個人消費も09年3月のボトム時にはピーク比年率4300億ドル減になったものの、これもまた6月以降に上昇。ボトム時と比べると20%以上も増加している。特に賃金が2%台の上昇を続けたことが下支えとなった。
最近、ロサンゼルス在住のある友人の報告によると、「不況時に人が集まるのは映画館やブックストア。しかし今回は、3D(3次元映像)映画や電子書籍端末、新型スマートフォンなど、以前の不況時とは違って新しい流れがみえる」という。またニューヨークの知人も「いつも行くコーヒーショップが、コーヒーの値段をいきなり6%も値上げした。しかし、値上げする側もされる側も当たり前のように受け入れている」と話す。自動車販売、住宅価格などをみても、悪影響は恐ろしい予言の半分ぐらいで過ぎ去ってしまった感がある。
10年の米国の成長率について、日本のコンセンサスは2から5%。しかし、強気筋は違う。「当たり屋」として知られる米投資ファンド大手ブラックストーン・グループの著名ストラテジストであるバイロン・ウィーン氏が10年の「10大サプライズ予想」で、何と「米国の実質成長率は5%超。失業率は9%を切る」と予測。この「10大サプライズ予想」は同氏が86年から続けており、高い的中率で知られる。
米国の消費者行動が重要な意味を持つのは、3D映画にせよ、電子書籍端末にせよ、川下の需要の増加が川上の新しい投資の誘発につながるからだ。多くの映画館が3D映画を上映するために必要な投資を行っているし、新しい電子書籍端末は、ソフトとハードの両面で投資を刺激する。
ここ2、3年の米国でみられなかった新しい経済成長の芽生えが確認できる。これが大恐慌と今回との大きな違いではないか。
■今井 澂(いまい きよし) 国際エコノミスト















