エコノミストマネー:オバマ政権の金融規制案 株式相場への悪影響必至
マーケット最前線 ニューヨーク株(エコノミストマネー2010年3月号より)大手金融機関に対し、金融危機の際は腫れ物に触るような態度だったオバマ政権が、今年秋の中間選挙を控えて急速に態度を硬化させている。
オバマ大統領は1月27日の一般教書演説で、大手金融機関について、「彼らが一番困っている時に助けてやった。今度は彼らが(米国の雇用を)助ける番だ」と述べ、両党総立ちの拍手喝采を浴びた。
オバマ大統領の支持率が就任以降、一貫してジリ貧となるなか、目玉であった医療保険改革法案もこれといった前進をみせることができず、1月に行われたマサチューセッツ州上院議員補欠選挙では、共和党候補が勝利するに至った。
オバマ大統領としては「金融危機がなければ」という思いが日に日に強くなっていることだろう。もしも金融危機がなかったなら、再選前の景気浮揚に向けて財政を温存することもできただろうし、何よりも「大きすぎて潰せない」金融機関を救済するという不本意な処置を施し、国民の批判を買うこともなかっただろうから。
「金融システムはもう問題ない」と踏んだのか、最近になってオバマ政権はたまっていた不満を一気に噴出させているようにみえる。
1月14日、オバマ政権は「金融危機責任料」の導入を、次いで21日に包括的な金融規制案の導入を発表した。これらはいずれも金融機関の規模制限及び収益低下を通じて、貸し出しの減少につながりかねないリスクをはらんでいる。それでもオバマ政権が導入を発表したのは、中間選挙を前に国民の不満を和らげ、支持率を上昇させることが最優先と判断したからだろう。
たしかに金融危機後の大手金融機関の態度は極めて悪質だ。08年9月のリーマン・ショック直後、財務省と連銀に助けを請い、米保険大手のアメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)の救済によって巨額の損失を逃れたこと。カラ売り規制によって自社の株価下落を止めてもらい、連銀に流動性を保証してもらったこと。預金保険公社保証の債券発行を許され、公的資金を注入してもらったこと。
これら多数の救済を受けたにもかかわらず、その後1年も経たないうちに巨額のボーナス支給を再開しているのである。一方で、救済のための公的資金を負担したはずの「メーンストリート」(「ウォールストリート」に対する一般市民のたとえ)の失業率は10%に達している。
◇空しい金融機関叩き
しかし、金融危機がいったん去ったからといって、米国経済は金融機関を叩いても到底やっていける状況とは考えられない。失業率は高止まりし、金融危機の根本的な原因であった住宅市場はほぼ底ばいだ。
今後は2月に流動性対策の打ち切り、3月に連銀による住宅ローンなどの証券買い取りの打ち切り、4月に住宅新規購入者支援打ち切りといったスケジュールが控えている。
大手金融機関の株価は昨年3月から8月にかけて、フィラデルフィアKBW銀行株指数でみて170%もの上昇率を示した。そして、これら大手金融機関の株価上昇が、幅広い他セクターの株価上昇につながったことは言うまでもない。
しかし、その後の大手金融機関の株価は約半年にわたって横ばいで推移している。そして、今回の金融規制が発表された。「経済の血液」の流れの悪化は次第に株式相場に悪影響を与えていくことになろう。
■堀古 英司(ほりこ ひでじ) ホリコ・キャピタル マネジメント社長(NYでヘッジファンドを運用)















