エコノミストマネー:夏場まで続く世界の株高 短期調整後に本格上昇へ

 マーケット最前線 ワールドコンパス(エコノミストマネー2010年2月号より)

 2010年は世界経済の順調な拡大が続くだろう。

 こう書き出すと、反論を述べる方も多かろう。「リーマン・ショック」から09年3月までの世界的な大暴落は「100年に一度」と騒がれた。世界大恐慌の影におびえてのものだったが、幸い、現実には大恐慌は起きなかった。ドバイやギリシャ、商業用不動産など局地的な騒ぎのもとは見受けられるが、世界経済は成長軌道に戻りつつある。

 「資産運用に携わる人にとって、絶対に信用してはいけない言葉がある。『今回だけは別だ』というものだ」

 これは、米国の国際投資のパイオニアである故ジョン・マークス・テンプルトンの言葉だ。

 私は、現在の世界経済は、この経験則通りに展開していると考えている。

 まず、09年3月以降のグローバルな株式市場上昇は、まだ10カ月しか続いていない。リセッション(景気後退)終了後の株価上昇は、平均18カ月続くことを踏まえると、夏ごろまでは上昇基調とみていい。

 次に、上昇相場は、初期には金融緩和をパックにした「金融相場」で、次第に企業業績を反映した「業績相場」に転換していく。10年中に転換し、10年の企業収益は世界全体で20%以上の大幅増益となる見込みだ。

 現状を説明しよう。金融情報サービスのブルームバーグが、市場指標に採用されている銘柄に対するアナリストの10年企業収益予想を集計し、07年を中心とした各国のピーク時(100)と比較している。最高は韓国の119で、次いでインド98、中国92、ブラジル90と、新興国が高い。先進国は、米国79、ドイツ79で日本は51でしかない。

 10年末の予想PER(株価収益率)では新興国がやはり高い。中国19倍、インド16倍、ブラジル13倍、韓国10倍で、企業収益の伸びを考えれば、割高ではない水準だ。一方、先進国では米国10倍、ドイツなど欧州主要国12倍。これに対し日本は20倍と魅力に乏しい。


  ◇世界に溢れる巨大な流動性

 話を戻そう。最も大切なことは、現在の世界中に溢れている流動性の巨大さだ。1兆5000億ドルから3兆ドルと推定される。その中心は米連邦準備制度理事会(FRB)で、米ドルのキャリー取引が資金の主体だということである。

 ドル・キャリー取引とは、ほぼゼロ金利のドルを調達資金に、高金利通貨や商品に投資するもの。ドルで買える金や原油はそのままだが、たとえばブラジル株はレアルに換える。当然、その分はドル売りになるのでドル安要因となる。現物のドル売りと同時に先物やオプションで売りが行われるので、その分だけでも十二分に収益があったことになる。

 つまり、現時点での世界の株式市場は「企業業績の回復期待を伴う金融相場」という、最も上昇エネルギーに満ちた状況にあると言える。

 だからこそ、08年11月から09年11月末までの株価上昇率はロシア120%、ブラジル79%、中国75%、インド70%、米国S&P50021%、ドイツ、英国がともに17%と、勢いがいい。

 ところが、10年には大きな変化が起きる。それは「出口戦略」だ。FRBはゼロ金利政策という異常事態をいつまでも続けるわけにはいかない。また、ドル安にも限界がある。ドルの価値を示す実効レートをみると、08年につけた史上最安値に接近しつつある。これを大きく下回らないようにするには、「超」が3つ付くほどの金融緩和から転換していかなければならない。

 また、オバマ政権は「ドル安は米国景気の建て直しのための必要悪」と考えている。ドル安は、どこかのタイミングで巻き戻しに入る。

 経験則からみても、金融相場から業績相場に切り替わるときは、株式市場は短期的に調整期に入り、その後は息の長い上昇に転じる。また、物色対象もガラリと変わる。そのあたりで日本株の復活も十分にありえよう。

  ■今井 澂(いまい きよし) 国際エコノミスト


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