エコノミストマネー:「世界を救うBRICs」楽観論に転じたソロス氏

 マーケット最前線 ワールドコンパス(エコノミストマネー2010年1月号より)

 ヘッジファンドの世界で著名なジョージ・ソロス氏が大胆な予測を発表した。「世界経済の中心は米国などの先進諸国から中国に移りつつある。今後は国家管理型の中国が世界経済の軸になり、国連と提携した世界政府の形で統治が行われるべきだ」というのである。また、「米国の消費が低迷して米国型の金融中心の経済が崩れても、中国を中心として新興国がその消費を受け持つ。世界経済を救うのは中国に先導されたインド、ブラジル、ロシアのBRICsだ」という楽観的な未来図を述べている。

 ソロス氏は、米国発の金融危機を予測して見事的中させており、「米国の過剰消費がなくなり、世界経済も不況へ」と悲観的な見方をしていた。これが180度転換したと言っていいだろう。

 英紙『フィナンシャル・タイムズ』も、世界経済での中国の存在感の大きさについて「中国の1人当たり国民所得は3200ドルで、日本の4万ドルの8%しかない。しかし、国内総生産(GDP)では間もなく日本を抜く。すでに中国株式市場の時価総額は日本より大きく、輸出総額ではドイツを抜いた」などと伝えている。

 同紙によると、中国がリーダーシップをとり、世界経済への貢献を始めているのはアフリカだ。貧困のため先進国からの援助で生きてきたアフリカ諸国は、主に中国からの低利融資や債権放棄、技術供与などの投資によって成長力をつけ始めた。

 中国は、不況からの回復や企業収益の回復も素晴らしい。三菱UFJ証券景気循環研究所によると、2009年の中国の成長率は8%の見通しだが、10年は10%を超える見込み。5月から始まる上海国際博覧会(上海万博)というイベントもあるが、やはりリーマン・ショック直後に公表した4兆元の景気対策の効果が表れていると考える。


  ◇2010年から世界は好景気の時代に突入

 オバマ米大統領も11月に訪中した際、来日時に日本をもてはやした以上に中国を持ち上げ、「米中で世界をリードしよう」と呼びかけた。人民元の切り上げも中国首脳に迫ったが、中国側は及び腰だった。実際、人民元の切り上げがスローペースにとどまっているところをみると、誘いには乗らない考えだろう。

 米国は自分たちの資本主義モデルと異なるものが勃興すると、大きな脅威を感じるようだ。そして、とりあえずは「ほめ殺し」に入る。その国がのぼせているうちに、その国の経済状況などを調べ、ある時点から攻撃を始める。

 1980年代の日本も現在の中国と同様に注目されていた。「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などと、数多くの学者が「政府主導による日本モデルの産業政策を米国も見習うべきだ」と主張した。効果はなかったが、日本の強みだった総合商社を真似する法律まで作られた。

 資本主義の発展段階では、政府の干渉、行政指導、金融の重点配分などが大きな役割を果たす時期がある。経済が成熟し、複雑化するにつれ、政府の役割は減少する。日本に倣って成長してきた韓国、台湾、マレーシア、シンガポールなども同じコースをたどりつつある。恐らく、中国も長期的には同じコースをたどることになるだろう。

 しかし、それまでの恐らく数年間は、ソロス氏の言う通り、中国がリーダーシップを握るアジアが世界経済の発展を支えるに違いない。

 家電製品や2輪、自動車というような耐久消費財を購入できるのは、世帯の可処分所得が5000ドルを超える中間層の人々だ。アジアの中間層は90年の1億4000万人から08年には6・3倍の8億8000万人になった。この層の購買力が期待できる。

 10年から世界はグローバルな好景気の時代に突入するだろう。日本だけが「蚊帳の外」ということはなく、日本にも好影響が出るのは時間の問題だと考える。

  ■今井 澂(いまい きよし) 国際エコノミスト


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