エコノミストマネー:最近の住宅価格上昇は本格回復の兆しではない
マーケット最前線 ニューヨーク株(エコノミストマネー2010年1月号より)2009年春以降、米住宅価格の代表的指標であるS&Pケース・シラー住宅価格指数や新築住宅販売など一部の住宅指標が改善傾向にある。これは住宅価格回復の兆しなのか、あるいは下落途上の踊り場なのか? 残念ながら現時点では後者の可能性が高い。
S&Pケース・シラー住宅価格指数は06年5月をピークに、09年4月まで約32%下落した。住宅価格が持ち直しているとはいえ、09年4月の安値からわずか5%上昇しただけだ。しかも、その上昇は一時的要因によって演出されているのが明らかだ。
第1に、新規住宅購入支援策。これは住宅を新規購入する人に、最大8000ドル分の税制上のメリットを与えるもの。当初は11月末に終了する予定だったが、10年4月まで延長された。ただ、10年5月以降への再延長はないとみられる。 第2に、FRB(米連邦準備制度理事会)による住宅ローン証券の買い取り。これにより住宅ローン証券の流通利回りが低下し、翻って住宅ローンの借入金利が史上最低水準にまで低下した。住宅ローン証券を含む証券化商品の買い取りは当初09年末に終了する予定だったが、これも10年3月まで延長された。
しかし、同じく金融危機を受けて導入された国債買い取りがすでに10月末で終了していることを考えれば、こちらもこれ以上の延長はないと考えるのが自然だろう。
第3に、住宅ローンの条件変更プログラムである。サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)が問題になった一因は、当初は低く据え置くものの数年後には金利が跳ね上がる条件の変動金利型ローンだったこと。金利アップを猶予すべく、このプログラムが実施された。
しかし、そもそもサブプライムローンの金利変更時期のピークは08年。今は市場金利も低いため、今後はこのプログラムによる住宅市場安定効果は極めて限定的と考えられる。
第4に、FHA(連邦住宅局)による積極的な住宅ローンの貸し出しである。これは08年に実質破綻に追いやられた政府系住宅金融機関のファニーメイやフレディマックに代わるもので、両社の実質破綻以降、積極的に貸し出しを増やしてきた。しかし、例えば頭金を物件価格の最低3・5%と低く設定するなど貸し出し基準が非常に甘く、債務不履行が急増。最近になって最低必要資本を割り込む事態となっており、少なくともこれまでのような積極的な貸し出しは継続不可能とみられる。
第5に、季節的要因だ。米国の住宅市場は春から夏にかけてが最も活発に動く。リーマン・ショックによるペントアップ・デマンド(抑制されてきた需要)が前述のような一連の住宅対策とも相まって一気に出てきた可能性が高い。
◇下落し始めた住宅建設株指数
米国の金融システムの大部分は住宅を担保として成り立っているため、究極的には住宅価格が住宅ローンの価値を決定する。つまり、米金融システムの安定は今後の住宅価格の動向にかかっていると言っても過言ではない。
株式投資は、保証された利払いや返済期限のない究極の金融であるから、おのずから株式相場も住宅価格の影響を大きく受けることになる。そして気になるのは、住宅市場の先行指標と言われる住宅建設株指数が9月以降、既にじわじわと下落し始めていることだ。
■Horiko Capital Management社長 堀古英司(ほりこ・ひでじ=NYでヘッジファンドを運用)















