エコノミストマネー:マーケット最前線 ワールドコンパス(2009年12月号)

今井 澂 国際エコノミスト

  ◇セット化される韓国買いと日本売り

 グローバル投資の世界でオピニオンリーダーとして著名なゴールドマン・サックス証券は9月21日、「韓国と北朝鮮が経済面で統合すれば、2050年には国内総生産(GDP)でフランス、ドイツ、日本を抜く」との趣旨のリポートを発表した。

 同社は05年にも韓国について「25年に世界9位」との強気のリポートを発表したが、今回はさらに大変な昇格ぶりだ。

 注目点は、韓国の1人当たり国民所得が50年に世界で2位になるという点だ。韓国は9万6000㌦、北朝鮮は7万㌦、韓国と北朝鮮の平均値は8万6000㌦になると予測している。

 北朝鮮の1人当たり国民所得は現在2000㌦にも満たない。この平均値は現在の約40倍にもなる。韓国は1995年に1万㌦を超えたが、いまだに2万㌦に達していない。日本を含む先進国はすでに2万㌦の壁を超えている。

 また、米国発の金融危機の影響で、今年の春ごろに韓国通貨ウォンは暴落。韓国経済は北朝鮮リスクもあって、株価も安かった。

 しかし、同社は強気だ。7月の投資説明会で「韓国は北朝鮮と経済面での統合が進展するので、見通しは明るい」と発表するとともに、「韓国の李明博大統領は、大統領選挙時に対北援助を公約している。東西ドイツのような政治体制の変更はない」とも述べている。

 前後して韓国総合株価指数は急上昇。韓国政府の市場介入もあり、ウォン安の動きは止まり、反発した。

  ◇南北経済統一はオバマ政権の戦略

 韓国と北朝鮮が統一した場合、「買い」となる理由は2つ。まず、北朝鮮の非鉄金属など天然資源の豊富さや優秀な労働者を安い賃金で雇えるという競争力の強さ。これには東欧など旧共産圏が資本主義経済への転換時に高成長したという実績がある。そして、それよりも大きな買い材料として、オバマ政権の戦略が挙げられる。

 例えば、主要20カ国・地域首脳会議(G20金融サミット)への韓国の参加が挙げられる。フランスなどは、韓国の参加に反対していたと言われるが、米国が強引に参加させた。アジアからは日本、中国、インド、インドネシア、中近東からはサウジアラビアが参加した。この5カ国の参加で十分ではないかと思うのだが、そこに米国は韓国を押し込み、来年のG20サミットの韓国開催まで認めた。

 おそらく同社は、ビル・クリントン元大統領の8月の訪朝で、金正日総書記に「核放棄方針を公表すれば、北の体制を維持したままの南北経済統一を米国は認める」というオバマ政権の方針が伝えられたことを大きな材料とみたのだろう。

 問題は、この「韓国買い」の情報が「日本売り」とワンセットになっていることだ。理由は残念ながら、鳩山由紀夫政権の外交政策にある。鳩山政権が対米国よりも対中国を重視していることで、日米同盟に不信感が出ている。

 例えば、米紙『ワシントンポスト』は「いま、最も厄介なのは中国ではなく日本」、同『ウォールストリート・ジャーナル』は「広がる日米同盟の亀裂」などと伝えている。

 特に、岡田克也外相の「米国に核兵器の先制不使用宣言をするよう求める」との発言に対し、米国から「内政干渉だ」などと批判が強まっている。10月に来日したゲーツ米国防長官が公式出迎えを断ったことからも、米国側の日本への不信感が伝わってくる。沖縄の基地問題に決着がつかないことも、不信感に拍車をかけている。

 また、経済面では「無理な福祉中心の予算拡大で財政収支は一段と悪化、国債市場での政府の資金調達が苦しくなり、長期金利上昇」という悪夢が、大手ヘッジファンドの間でささやかれている。日本にも日本株にも長期強気の筆者の姿勢は崩れないが、目先は心配だ。(2009年12月号)

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