エコノミストマネー:マーケット最前線 ニューヨーク株(2009年12月号)
Horiko Capital Management社長 堀古英司(ほりこ・ひでじ=NYでヘッジファンドを運用)◇次の金融危機の震源はプライムと商業不動産?
2007年に始まった一連の金融危機の背景にあったのは、住宅をはじめとする資産価格の下落である。景気にも株式相場にも波はあるが、資産価格の下落が止まらない限り、自己資本に対してより大きな借り入れで資産を購入していた主体が順番に破綻するという大きな流れは変わらないことに留意が必要だ。
住宅価格が06年半ばに天井を打った後、危機はレバレッジの高い順、つまり自己資本に対して借金が多い順に訪れた。モノラインと呼ばれる金融保証会社は、自己資本に対して100倍以上の保証を行っており、資産価格の下落に対して最も脆弱な財務体質であった。この危機は07年後半から08年前半にかけて訪れた。
次にレバレッジの高かったのはファニーメイなどの政府系住宅金融機関である。これらは最低自己資本比率として2・5%が求められていたので、表向きは100÷2・5=40倍のレバレッジということになっていた。しかし、実際には簿外の債務保証も行っていたため、実質的には50~60倍だった。08年9月初めに政府の管理下に置かれた。
次がリーマン・ブラザーズやベア・スターンズに代表される証券会社である。証券会社のレバレッジ倍率は近年急上昇し、30~40倍というのが普通の姿になっていた。案の定、政府系金融機関の実質破綻から間もなく危機が波及していった。08年9月のリーマン・ショックによって、危機は一気にレバレッジ倍率10~20倍の銀行や自動車大手に波及。財務省が大手19行は守る姿勢を示したため、金融システムが麻痺するような事態は回避されたが、いまも中小銀行の破綻は進行中だ。
◇プライム層の延滞率が上昇
金融システム自体が脅かされる事態となり、米国はなりふり構わない「対策」をとるようになった。73兆円に上るオバマ景気対策、1000兆円以上に上るさまざまな金融保証などがその例である。いまのところはこうした対策が奏功し、問題は収まっているかのようにみえる。しかし、前述の通り、07年から始まった一連の金融危機は資産価格の下落が止まらない限り、収束しない。この先景気対策などが失効していくにつれ、本来の問題である資産価格の下落が再開してくる可能性が高い。
今後要注意なのは、信用力の高いプライム層の住宅ローン債務の不履行、及び商業不動産の価格下落だ。
米国では歴史的に1%前後で推移してきたプライム層の返済延滞率が08年以降急上昇を始め、現在5%に接近している。失業率が上昇の一途であるのに加えて、米国では半数強の州で住宅ローンは、担保を超える返済義務を負わない「ノンリコース」(非遡及型)条件となっている。このため、住宅価格の下落を受けて「自発的な」債務不履行が急増していることが背景にある。
また、商業不動産に空き物件が急増している。ニューヨークのマンハッタン南東部にあるスタイバソンという1万1000棟強のアパート群は、06年末に借り入れ300億㌦を含む500億㌦で買収されたが、その借り入れ部分が近々債務不履行に陥る可能性が高まっている。
プライムローンも商業不動産も、レバレッジ倍率は高くても5倍前後だろう。しかし、07年に大きな問題となったサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)関連証券が1兆3000億㌦規模であったのに対し、プライムローンは4兆8000億㌦、商業不動産は3兆7000億㌦と規模は格段に大きい。次の危機の震源と言えよう。(2009年12月号)















