エコノミストマネー:金融副大臣 大塚耕平の経済をみる「眼」(2009年12月号)

政権交代により、日銀出身で民主党きっての経済通が内閣府副大臣(金融担当)に就任しました。政策担当者ならではの視点を提供します。

  ◇予算編成や経済運営にも必要なイノベーション

 米財務省は10月16日、2009会計年度(08年10月?09年9月)の財政赤字が1兆4000億㌦(約126兆円)に達すると発表。過去最大だった08会計年度(4548億㌦)の3倍以上で、対GDP(国内総生産)比は約10%に上ります。大規模な財政出動によるやむを得ない結果ですが、これがドルや米国債への信認を低下させていることは否定できません。昨秋のリーマン・ショック前に60%台だった長期債務残高の対GDP比は国際通貨基金(IMF)の予測では14年に100%を超える見込みです。

 日本にとってもこれは「対岸の火事」ではありません。日本の国・地方の長期債務残高の対GDP比は07年に188%で、IMFの予測では14年に246%に達する見通しです。

 しかも、10年度一般会計予算の概算要求規模は過去最大の総額95兆円超。歳出規模を削減しなければ、その悪化ペースは加速します。

 そもそも、財政赤字(長期債務残高)の対GDP比率の改善には、毎年度のプライマリーバランス(国・地方の基礎的財政収支、以下PB)の黒字化が必要です。PBの黒字化には、分子(財政赤字〈長期債務残高〉)を減少させる、または経済成長によって分母(GDP)を増加させる必要があり、歳出削減、増税、経済成長の3つが鍵となります。

 今年1月に公表された「経済財政の中長期方針と10年展望」(10年展望)は、従来の財政健全化目標だった11年のPB黒字化は「困難」と述べ、ある程度の歳出削減と増税を行ったうえで18年になる見通しだと試算。さらに、今年6月の改定値(「経済財政の中長期試算」)では、21年に後ズレするとしています。

  ◇「合算予算」や新旧政権の「債務の分別管理」を提案

  新政権も、経済財政の中長期見通しを明らかにすることが必要になりますが、PBの黒字化に向けて、従来の発想や前提にとらわれずに、新たな切り口を模索することが求められます。

 例えば、PBは一般会計ベースで算出されていると考えられがちですが、実は政府推計による計算結果はSNA(国連統計局の国民経済計算)ベースで、特別会計や独立行政法人などの歳出を含んでいます。逆に言えば、旧政権下でPBが改善しなかったのは、それらの見直しが進まなかったことの証左であり、新政権ではその改革を進めることが必要です。

 また、民主党がマニフェスト(政権公約)で掲げた一般会計と特別会計の「合算予算」も忘れてはなりません。合算予算の実現には財政法や会計法の改正が必要ですが、今年度予算案は従来ベースとしつつ、議論そのものは合算ベースを前提に行うのも一案です。

 11年度予算編成からは必要な法改正を行い、合算予算に正式に転換すべきでしょう。

 さらに、財政赤字(長期債務残高)を自民党政権下にあった今年度分までの「過去債務」と、来年度以降分の新政権下での「新債務」に分けて管理することも検討に値します。

 経済財政の中長期見通しを試算する際の前提条件や運用方法についても、透明性を確保することが必要です。物価や金利、生産性などの定義や前提について、市場との十分な情報共有を図っていくことが重要な鍵になります。

 政権交代が起きた事実を再認識し、予算編成や経済運営についてもイノベーションにチャレンジしていかなければなりません。(2009年12月号)

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