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最終更新:2011年07月27日

エコノミストマネー:ユーロの制度的欠陥、ギリシャ危機で露呈

マーケット最前線 為替相場の読み方(エコノミストマネー2010年7月号より)


ギリシャの財政赤字膨張・債務不履行(デフォルト)懸念は、南欧諸国ひいては欧州全体の信用不安問題へと拡大し、ユーロ相場が急落した。さらに、ドイツが単独でユーロ圏国債などの空売り規制を導入したことによって投資マネーのリスク回避志向が一層促され、グローバルな株価の急落劇へと発展した。そして、為替市場では「逃避通貨」である円が急騰した。

このような一連の動きを、どのように理解すればよいか。まず言えるのは、現在の状況は、米国の住宅バブル崩壊に端を発した危機が形を変えて続いているもの。そして、民間部門から公的部門へとリスクが移転したが、各国の財政赤字の膨張ぶりを目の当たりにした市場は、経済基盤が弱い国の国債の債務不履行リスク「ソブリン・リスク」を意識せざるを得なくなった、というものだ。筆者も、この考え方に賛成である。トリシェECB(欧州中央銀行)総裁は5月12日、「我々はまず、2007年に金融の動揺に直面した。続いて08年半ばに危機が深刻化して、世界中の民間部門に打撃を与えた。そして現在、各国政府の信用力が疑問視される状況に陥っている」とコメントしている。

それに加えて見逃すことができないのが、欧州通貨統合に内在していた制度的欠陥がはっきりと露呈した、という事実だ。このことが事態を複雑にし、市場の混乱を増幅している。

欧州は経済統合を先行させ、政治統合は後回しになっている。ユーロ圏では、金融政策はECBがコントロールしている。そして、単一通貨であるユーロが流通してはいるが、財政政策(国債発行による資金調達を含む)は基本的に、各国の主権に委ねられている。

しかし、通貨統合加盟国の経済状態には、かなりの差がある。同じ政策金利でも水準が高すぎて景気が抑圧される国と、低すぎて住宅バブルが発生する国とが併存している。さらに、財政規律が緩い国では赤字が膨張し、市場の懸念が膨らんだ。

危機の発端となったギリシャに至っては、前政権が虚偽の統計数値を申告して通貨統合に参加したことさえ明らかになり、性善説が前提の通貨統合はダメージを受けた形だ。しかも、このような危機対応時の枠組みが事前に決められていなかった。



◇求められる「欧州人」
それでは、危機に陥って資金繰りが危うくなったギリシャをどうするか。ユーロ圏最大の経済規模を誇るドイツ国民の間では、ギリシャを救済することに対して、批判的な意見が少なくない。「なぜ勤勉なドイツ人が、うそつきで怠け者のギリシャ人を救わなければならないのか?」という、素直な国民感情がそこにある。

しかし、物事にはいったん足を踏み入れてしまうと後戻りできないということが、往々にしてある。無理に後戻りすると、すべてが壊れてしまいかねない。今の欧州通貨統合は、まさにそれである。ドイツ人にもギリシャ人にも、国家エゴを乗り越えた「欧州人」としての意識が求められている。市場はそのあたりを見極めようとしている面がある。

ドイツ人は、欧州通貨統合という制度を維持するための危機対応の政策協調にきちんと参加することができるか、ギリシャ人は、欧州通貨統合のメンバーとして残留するために、厳しい財政緊縮に耐えることができるかが、引き続き注目点だ。

ドイツの議会は5月21日、ユーロ圏支援基金への最大1480億ユーロの拠出を承認した。1つの朗報である。


■上野 泰也(うえの・やすなり)みずほ証券チーフマーケットエコノミスト




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