エコノミストマネー:「5月に売ってどこかへ行け」 米国の繁閑を理解しよう
マーケット最前線 ニューヨーク株(エコノミストマネー2010年6月号より)
「5月に売ってどこかへ行け」はウォール街の格言だ。
米国の株式相場は歴史的に6月から10月にかけてのパフォーマンスが悪いので、市場関係者は6月に入ったら夏休みを取り始めた方がよいと言われる。
米国では5月末祝日のメモリアルデー(戦没者追悼記念日)から、9月初めのレーバーデー(労働記念日)の祝日の間が行楽シーズンとされているが、同時に、歴史的に株式相場のパフォーマンスが悪いシーズンとしても知られているのである。
格言の正しさは統計で裏付けられている。
米国の主要株価指数であるS&P500指数を見てみると、過去50年間の5月末から10月末までのパフォーマンス平均は、わずかプラス0.5%。過去20年間の同平均ではマイナス0.6%にまで下がり、「どこかへ行く」どころか、きっちり5月中に売っておかないと損失が出てしまう。
一方、11月から5月は過去50年間平均でプラス6.4%、過去20年間平均では7.2%となっている。
すなわち、過去の米国株式相場の上昇は、ほとんど11月から5月までに達成されてきたということになる。
5月と10月がターニングポイントということから想起されるのは投資信託と、投資信託に資金を投入する人たちの動向だ。
米国では10月末に投資信託の決算が集中するため、税制上の損益通算を狙った株式売りが出やすい。
一方、米国人は今も金融資産の約40%を株式で保有する。毎年4月15日の確定申告の期限後、退職に備えた無税で積み立てできる資金が株式市場に一斉に流入してくる。個人での株式投資にしろ、投資信託への投資にしろ、実際に買い付けのピークが5月になるということだろう。
そして今年も、この歴史的な傾向が継承される可能性は高いと見ている。
第1に、2009年3月以降の75%以上もの株価上昇によって過熱感が出るとともに割安感がなくなっている。すでに09年利益ベースで、ほとんどのセクターが20倍以上の株価収益倍率となっており、実力よりも期待が上昇を支えているとの感が否めない。
第2に、短期金利がゼロ%近くに張り付いていて長期金利の上昇圧力が高く、株式市場にホットマネーが流入しやすい一方で、逆に中長期性の資金は入りにくくなっている。実際、ここ1年の投資信託への資金動向は、債券ファンドへの流入が目立つ。
第3に、09年から導入されたオバマ景気対策の反動が表面化する時期に入る。とりわけ、新規住宅購入支援策は4月末までの契約が条件になっている。すでに、連銀による住宅ローン証券の買い取りが終了していることもあり、この先の景気回復ペースはスローダウンしていくと見るのが自然だろう。
現在、米国の主要株価指数は「リーマン・ショック前」への回復をにらんだ水準にある。しかし、割安感の後退、長期金利の上昇、景気対策の反動などによって、水準はファンダメンタルズから次第に遠ざかっているように見える。ここはむしろ、季節性に助けられて、需給とファンダメンタルズがさや寄せする形で調整されるのが健全ではないだろうか。
■堀古 英司(ほりこ ひでじ) ホリコ・キャピタル マネジメント社長(NYでヘッジファンドを運用)
「5月に売ってどこかへ行け」はウォール街の格言だ。
米国の株式相場は歴史的に6月から10月にかけてのパフォーマンスが悪いので、市場関係者は6月に入ったら夏休みを取り始めた方がよいと言われる。
米国では5月末祝日のメモリアルデー(戦没者追悼記念日)から、9月初めのレーバーデー(労働記念日)の祝日の間が行楽シーズンとされているが、同時に、歴史的に株式相場のパフォーマンスが悪いシーズンとしても知られているのである。
格言の正しさは統計で裏付けられている。
米国の主要株価指数であるS&P500指数を見てみると、過去50年間の5月末から10月末までのパフォーマンス平均は、わずかプラス0.5%。過去20年間の同平均ではマイナス0.6%にまで下がり、「どこかへ行く」どころか、きっちり5月中に売っておかないと損失が出てしまう。
一方、11月から5月は過去50年間平均でプラス6.4%、過去20年間平均では7.2%となっている。
すなわち、過去の米国株式相場の上昇は、ほとんど11月から5月までに達成されてきたということになる。
5月と10月がターニングポイントということから想起されるのは投資信託と、投資信託に資金を投入する人たちの動向だ。
米国では10月末に投資信託の決算が集中するため、税制上の損益通算を狙った株式売りが出やすい。
一方、米国人は今も金融資産の約40%を株式で保有する。毎年4月15日の確定申告の期限後、退職に備えた無税で積み立てできる資金が株式市場に一斉に流入してくる。個人での株式投資にしろ、投資信託への投資にしろ、実際に買い付けのピークが5月になるということだろう。
そして今年も、この歴史的な傾向が継承される可能性は高いと見ている。
第1に、2009年3月以降の75%以上もの株価上昇によって過熱感が出るとともに割安感がなくなっている。すでに09年利益ベースで、ほとんどのセクターが20倍以上の株価収益倍率となっており、実力よりも期待が上昇を支えているとの感が否めない。
第2に、短期金利がゼロ%近くに張り付いていて長期金利の上昇圧力が高く、株式市場にホットマネーが流入しやすい一方で、逆に中長期性の資金は入りにくくなっている。実際、ここ1年の投資信託への資金動向は、債券ファンドへの流入が目立つ。
第3に、09年から導入されたオバマ景気対策の反動が表面化する時期に入る。とりわけ、新規住宅購入支援策は4月末までの契約が条件になっている。すでに、連銀による住宅ローン証券の買い取りが終了していることもあり、この先の景気回復ペースはスローダウンしていくと見るのが自然だろう。
現在、米国の主要株価指数は「リーマン・ショック前」への回復をにらんだ水準にある。しかし、割安感の後退、長期金利の上昇、景気対策の反動などによって、水準はファンダメンタルズから次第に遠ざかっているように見える。ここはむしろ、季節性に助けられて、需給とファンダメンタルズがさや寄せする形で調整されるのが健全ではないだろうか。
■堀古 英司(ほりこ ひでじ) ホリコ・キャピタル マネジメント社長(NYでヘッジファンドを運用)












