エコノミストマネー:「タックスラグ」が今後の景気回復に影響
金融副大臣 大塚耕平の経済をみる「眼」(エコノミストマネー2010年6月号より)
昨年に比べると株価は総じて堅調に推移しています。2009年度2次補正予算、10年度当初予算の執行が本格化しているうえ、新興国向けを中心とした輸出回復もあり、景気の2番底は回避したようです。
投資家の不安心理を表すのが通称「恐怖指数」と呼ばれるVIX(Volatility Index)。米シカゴオプション取引所(CBOE)がS&P500を対象としたオプション取引のボラティリティー(変動率)を参考に算出、向こう30日間の株価の変動可能性を示したものです。
この数値は市場が平穏な時には10~20程度の水準ですが、08年秋のリーマン・ショック直後は80まで上昇。最近では20を下回っていることが株価の安心材料になっています。
一方、気になるのは実体経済です。そこで景気動向指数を確認してみると、これも改善しています。景気動向指数には、景気全体の勢い(強弱)を示す「CI(Composite Index)」と、景気の各経済部門への波及度合いを示す「DI(Diffusion Index)」の二つがあります。
CIのうち、先行指数と一致指数は09年前半から、遅行指数も同半ばから上昇傾向が継続。また、50を上回ると景気拡大局面を表すとされるDIも堅調です。遅行指数も昨年末から50を上回り始めました。
株価、景気のマインドをさらに押し上げるために必要なのは、今後の日本経済に対する安心感。そのためには財政に対する市場の信頼感向上がポイントです。来年度以降の予算編成、財政健全化に向け政府が本格的な予算・行政改革の動きを示すことができれば、市場環境はさらに好転する可能性が高いでしょう。
◇欠損金繰り越しで税収減
そこで気になるのは「タックスラグ」です。リーマン・ショック後の景気低迷を受け、09年度の税収は激減し、09年度の国と地方の法人税収は計9.7兆円の見通し。08年度実績18.4兆円の半分近くです。過去のピークはバブル期の89年度の19兆円。09年度はその約4分の1になるばかりか、77年度の8.7兆円以来、32年ぶりの低水準です。
法人税は、年間の半分程度を中間納付し、残りを合算して年度終了後に納める仕組み。従って、中間納付額が多すぎた場合には、年度終了後に「欠損金」として還付されます。
08年度はリーマン・ショックの影響が顕現化する前に中間納付するタイミングでした。そして同年度後半はリーマン・ショックの影響から業績が失速し、中間納付で過払い状態となる企業が急増。その結果、09年度に入ってからの還付額は3兆円を超え、08年度に比べ倍増しています。
しかも、欠損金は最長7年間の繰り越しが可能で、今後の税収にも影響します。08年度時点で翌期以降に繰り越された欠損金は90.8兆円。10年度以降の単年度の企業業績が回復しても、欠損金の繰越額が税収を減少させることになるのです。
11年度以降の予算編成における歳入に対して、リーマン・ショックに伴う税収の影響が時間差で表れてくるのが「タックスラグ」です。
リーマン・ショック後に早期退職等のリストラ経費を計上した企業も少なくありません。こうした経費も利益を圧縮し税収減につながります。景気が回復しても、税収が思ったほど伸びず、当面の財政健全化の障害になる蓋然性が高いと言えます。
その場合は国債発行につながり、景気回復と相まって金利が上昇。それがまた景気回復の制約となるという悩ましい展開もありえます。
■大塚耕平(おおつか・こうへい) 1959年、名古屋市生まれ。83年早稲田大学政治経済学部卒業後、日銀に入行。在籍中に同大学院博士課程(マクロ経済学、財政金融論)修了。2001年から参院議員(現在2期目)。中央大学大学院、早稲田大学客員教授を兼務。民主党きっての経済政策通として知られる。
昨年に比べると株価は総じて堅調に推移しています。2009年度2次補正予算、10年度当初予算の執行が本格化しているうえ、新興国向けを中心とした輸出回復もあり、景気の2番底は回避したようです。
投資家の不安心理を表すのが通称「恐怖指数」と呼ばれるVIX(Volatility Index)。米シカゴオプション取引所(CBOE)がS&P500を対象としたオプション取引のボラティリティー(変動率)を参考に算出、向こう30日間の株価の変動可能性を示したものです。
この数値は市場が平穏な時には10~20程度の水準ですが、08年秋のリーマン・ショック直後は80まで上昇。最近では20を下回っていることが株価の安心材料になっています。
一方、気になるのは実体経済です。そこで景気動向指数を確認してみると、これも改善しています。景気動向指数には、景気全体の勢い(強弱)を示す「CI(Composite Index)」と、景気の各経済部門への波及度合いを示す「DI(Diffusion Index)」の二つがあります。
CIのうち、先行指数と一致指数は09年前半から、遅行指数も同半ばから上昇傾向が継続。また、50を上回ると景気拡大局面を表すとされるDIも堅調です。遅行指数も昨年末から50を上回り始めました。
株価、景気のマインドをさらに押し上げるために必要なのは、今後の日本経済に対する安心感。そのためには財政に対する市場の信頼感向上がポイントです。来年度以降の予算編成、財政健全化に向け政府が本格的な予算・行政改革の動きを示すことができれば、市場環境はさらに好転する可能性が高いでしょう。
◇欠損金繰り越しで税収減
そこで気になるのは「タックスラグ」です。リーマン・ショック後の景気低迷を受け、09年度の税収は激減し、09年度の国と地方の法人税収は計9.7兆円の見通し。08年度実績18.4兆円の半分近くです。過去のピークはバブル期の89年度の19兆円。09年度はその約4分の1になるばかりか、77年度の8.7兆円以来、32年ぶりの低水準です。
法人税は、年間の半分程度を中間納付し、残りを合算して年度終了後に納める仕組み。従って、中間納付額が多すぎた場合には、年度終了後に「欠損金」として還付されます。
08年度はリーマン・ショックの影響が顕現化する前に中間納付するタイミングでした。そして同年度後半はリーマン・ショックの影響から業績が失速し、中間納付で過払い状態となる企業が急増。その結果、09年度に入ってからの還付額は3兆円を超え、08年度に比べ倍増しています。
しかも、欠損金は最長7年間の繰り越しが可能で、今後の税収にも影響します。08年度時点で翌期以降に繰り越された欠損金は90.8兆円。10年度以降の単年度の企業業績が回復しても、欠損金の繰越額が税収を減少させることになるのです。
11年度以降の予算編成における歳入に対して、リーマン・ショックに伴う税収の影響が時間差で表れてくるのが「タックスラグ」です。
リーマン・ショック後に早期退職等のリストラ経費を計上した企業も少なくありません。こうした経費も利益を圧縮し税収減につながります。景気が回復しても、税収が思ったほど伸びず、当面の財政健全化の障害になる蓋然性が高いと言えます。
その場合は国債発行につながり、景気回復と相まって金利が上昇。それがまた景気回復の制約となるという悩ましい展開もありえます。
■大塚耕平(おおつか・こうへい) 1959年、名古屋市生まれ。83年早稲田大学政治経済学部卒業後、日銀に入行。在籍中に同大学院博士課程(マクロ経済学、財政金融論)修了。2001年から参院議員(現在2期目)。中央大学大学院、早稲田大学客員教授を兼務。民主党きっての経済政策通として知られる。











