エコノミストマネー:「イエレンFRB副議長」なら超低金利が長期化へ
マーケット最前線 為替相場の読み方(エコノミストマネー2010年5月号より)
6月23日に任期が切れる米連邦準備制度理事会(FRB)のコーン副議長の後任候補として、米メディアで最初に名前が挙がったのは、ローマー大統領経済諮問委員会(CEA)委員長、クルーガー財務次官補(経済政策担当)、イエレン・サンフランシスコ地区連邦準備銀行総裁の3人。クルーガー氏以外は女性だ。
ローマー氏は自ら「副議長就任の意思なし」と明言した。クルーガー次官補は金融政策についての手腕が未知数で、市場での知名度も低い。残ったのが、1990年代にFRB理事やCEA委員長を歴任し、2004年からサンフランシスコ連銀トップとして積極的に発言しているイエレン氏である。金融引き締めに慎重なハト派の重鎮として、市場の注目度も高い。ギブズ大統領報道官も、イエレン氏が最有力候補であると認めている。
イエレン氏が2月22日に行った講演には、次のようなくだりがある。
「今後、数年にわたって物価安定を脅かす心配な要素は、経済の大きな需給ギャップだと私は考えている」「過去12カ月にわたり、コアPCEデフレーター(変動が激しいエネルギーと食料を除いた個人消費支出物価指数)は1.5%しか上昇していない。私を含むほとんどの米金融政策当局者が長期的な物価安定のために目指すべきだと考えている水準である2%よりも低い。しかも、需給ギャップが数年にわたり残存し、賃金がほとんど上昇しない可能性が高いだけに、コアインフレ率が今年と来年、さらに低い水準へと動いていく可能性が十分あるように思われる」
◇ハト派が勢力拡大へ
コアインフレのリスクが上下どちらにあるかについて、連邦公開市場委員会(FOMC)内の見解は2つに割れている。
1つは金融危機への対応で膨張したFRBのバランスシートや政策金利であるFF(フェデラルファンド)レートの超低水準、財政赤字の膨張などを根拠に、上振れ(インフレ)リスクを重視するタカ派陣営。「時間軸効果」を狙って超低金利政策を「より長い期間」続けることを約束する文言を声明文で維持することに1月と3月のFOMCで反対票を投じた、カンザスシティー連銀のホーニグ総裁がその筆頭格だ。フィラデルフィア連銀のプロッサー総裁も、タカ派的な発言が目立つ。
これに対し、下振れリスクを重視するハト派陣営には、イエレン総裁のほか、シカゴ連銀のエバンス総裁らが含まれる。
FOMCの票決は、FRB理事(議長・副議長も理事を兼任。定員7人だが、現在は5人しかいない)、ニューヨーク連銀総裁、他の地区連銀総裁のなかから輪番で投票権を有する総裁4人の計10人によって行われる。3月の票決では、現状維持は賛成9・反対1だった。
米国の金融政策の行方を占ううえで1つ重要なポイントは、そのFOMC内の勢力バランスである。コーン氏もハト派寄りで、イエレン氏も明確なハト派。しかも、主張にブレがない。また、オバマ大統領はFRB理事の空席2つについても指名し、上院に承認を求める考えだが、現在候補に挙がっている人物は金融政策面で独自の主張がない模様で、ベン・バーナンキFRB議長に従うのではないかとみられている。
筆者は引き続き、早期の利上げではなく、来年半ばにかけての超低金利政策の長期化こそが米国の金融政策のたどるコースだと予想している。米国の利上げは近くないということであり、ドルの上値は重い。
■上野 泰也(うえの やすなり)みずほ証券チーフマーケットエコノミスト
6月23日に任期が切れる米連邦準備制度理事会(FRB)のコーン副議長の後任候補として、米メディアで最初に名前が挙がったのは、ローマー大統領経済諮問委員会(CEA)委員長、クルーガー財務次官補(経済政策担当)、イエレン・サンフランシスコ地区連邦準備銀行総裁の3人。クルーガー氏以外は女性だ。
ローマー氏は自ら「副議長就任の意思なし」と明言した。クルーガー次官補は金融政策についての手腕が未知数で、市場での知名度も低い。残ったのが、1990年代にFRB理事やCEA委員長を歴任し、2004年からサンフランシスコ連銀トップとして積極的に発言しているイエレン氏である。金融引き締めに慎重なハト派の重鎮として、市場の注目度も高い。ギブズ大統領報道官も、イエレン氏が最有力候補であると認めている。
イエレン氏が2月22日に行った講演には、次のようなくだりがある。
「今後、数年にわたって物価安定を脅かす心配な要素は、経済の大きな需給ギャップだと私は考えている」「過去12カ月にわたり、コアPCEデフレーター(変動が激しいエネルギーと食料を除いた個人消費支出物価指数)は1.5%しか上昇していない。私を含むほとんどの米金融政策当局者が長期的な物価安定のために目指すべきだと考えている水準である2%よりも低い。しかも、需給ギャップが数年にわたり残存し、賃金がほとんど上昇しない可能性が高いだけに、コアインフレ率が今年と来年、さらに低い水準へと動いていく可能性が十分あるように思われる」
◇ハト派が勢力拡大へ
コアインフレのリスクが上下どちらにあるかについて、連邦公開市場委員会(FOMC)内の見解は2つに割れている。
1つは金融危機への対応で膨張したFRBのバランスシートや政策金利であるFF(フェデラルファンド)レートの超低水準、財政赤字の膨張などを根拠に、上振れ(インフレ)リスクを重視するタカ派陣営。「時間軸効果」を狙って超低金利政策を「より長い期間」続けることを約束する文言を声明文で維持することに1月と3月のFOMCで反対票を投じた、カンザスシティー連銀のホーニグ総裁がその筆頭格だ。フィラデルフィア連銀のプロッサー総裁も、タカ派的な発言が目立つ。
これに対し、下振れリスクを重視するハト派陣営には、イエレン総裁のほか、シカゴ連銀のエバンス総裁らが含まれる。
FOMCの票決は、FRB理事(議長・副議長も理事を兼任。定員7人だが、現在は5人しかいない)、ニューヨーク連銀総裁、他の地区連銀総裁のなかから輪番で投票権を有する総裁4人の計10人によって行われる。3月の票決では、現状維持は賛成9・反対1だった。
米国の金融政策の行方を占ううえで1つ重要なポイントは、そのFOMC内の勢力バランスである。コーン氏もハト派寄りで、イエレン氏も明確なハト派。しかも、主張にブレがない。また、オバマ大統領はFRB理事の空席2つについても指名し、上院に承認を求める考えだが、現在候補に挙がっている人物は金融政策面で独自の主張がない模様で、ベン・バーナンキFRB議長に従うのではないかとみられている。
筆者は引き続き、早期の利上げではなく、来年半ばにかけての超低金利政策の長期化こそが米国の金融政策のたどるコースだと予想している。米国の利上げは近くないということであり、ドルの上値は重い。
■上野 泰也(うえの やすなり)みずほ証券チーフマーケットエコノミスト











