エコノミストマネー:景気回復なき米国長期金利の上昇始まる
マーケット最前線 ニューヨーク株(エコノミストマネー2010年5月号より)
米国の長期金利は 1981年以降、一貫して右肩下がりの低下傾向をたどってきた。10年物米国債の利回りは81年に15%台を付けて以降、上下を繰り返しながらも2008 年後半の金融危機時に2%すれすれの水準にまで低下した。それから1年強たった本稿執筆時点、ほぼ倍の4%台を付けるに至っている。
長 期金利の低下が、米国の株式相場や不動産価格上昇に大きく貢献してきたことは言うまでもない。他の条件が一定なら、国債利回りが低下することで、同じく長 期性の資産である株式の魅力が相対的に増加するし、長期金利に連動する住宅ローン金利が低下することで、より高価な不動産を購入できるようになる。
とりわけ、この30年間に何回か訪れたリセッション局面では、さらに長期金利が低下することによって住宅投資が刺激されるという、いわば自動調節機能が働 くことによって、リセッションから脱出してきた。一方、景気が良いときには、ある程度長期金利が上昇することによって過剰な住宅投資が抑制され、不動産バ ブルの発生を防ぐことができた。
しかし04~05年にかけ、このパターンを崩す債券バブルが起こってしまった。その現象は後に、グリー ンスパン前FRB議長により「コナンドラム(謎)」と呼ばれた。景気は回復し、FRBは短期金利を引き上げているのに、長期金利が上がらないという状態で ある。景気が良く、長期金利が上昇しないので、アメリカ人は喜んで住宅を購入する。最終的にリーマン・ショックに至った不動産バブルの始まりである。
後にFRBの研究リポートでも指摘されているが、当時は日本や中国が大量に米国の長期国債を購入しており、長期金利が上昇しない大きな理由となっていた。
このような異常現象が起こったのだから、今後はその反動による逆の現象が起こるとみるのが自然だろう。すなわち、既に起こりつつあることだが、それほど景 気は回復していないのに長期金利が上昇してしまうという現象だ。ファンダメンタルズ面からも、需給面からも、債券(長期金利)を巡る環境は厳しいと言わざ るをえない。
ファンダメンタルズ面では、米国債の「質」が大幅に低下している。連邦債務は第2次大戦以来、初めてGDPの100%に達 する見込みで、政府系住宅金融機関(ファニーメイ、フレディマック)を全面保証することによって、これまでにはなかった住宅値下がりに伴う負担を負わされ ている。これらの変化を受けて、米国債がAAA格を失うのも時間の問題とみている。
需給面では、外国人による米国債購入が激減してい る。04年には発行金額のほぼ100%を引き受けていた外国人の比率は右肩下がりで低下し、09年末には35%となった。今のところ、市場に大きな影響が 出ていないのは連銀が21%もの国債を買い上げることによって帳尻を合わせているからだろう。しかし、出口戦略が模索されるなか、この先は連銀による国債 や住宅ローン証券の買い取りは期待できない。
一見、米国の住宅市場は安定してきているようにみえる。しかし、米国の代表的な住宅価格指数であるケースシラー住宅価格指数は、06年の最高値から32%下落した後は、たった3.9%反発しただけ。その状況で、既に長期金利が上昇を始めてしまっているのである。
■堀古 英司(ほりこ ひでじ)ホリコ・キャピタル マネジメント社長(NYでヘッジファンドを運用)
米国の長期金利は 1981年以降、一貫して右肩下がりの低下傾向をたどってきた。10年物米国債の利回りは81年に15%台を付けて以降、上下を繰り返しながらも2008 年後半の金融危機時に2%すれすれの水準にまで低下した。それから1年強たった本稿執筆時点、ほぼ倍の4%台を付けるに至っている。
長 期金利の低下が、米国の株式相場や不動産価格上昇に大きく貢献してきたことは言うまでもない。他の条件が一定なら、国債利回りが低下することで、同じく長 期性の資産である株式の魅力が相対的に増加するし、長期金利に連動する住宅ローン金利が低下することで、より高価な不動産を購入できるようになる。
とりわけ、この30年間に何回か訪れたリセッション局面では、さらに長期金利が低下することによって住宅投資が刺激されるという、いわば自動調節機能が働 くことによって、リセッションから脱出してきた。一方、景気が良いときには、ある程度長期金利が上昇することによって過剰な住宅投資が抑制され、不動産バ ブルの発生を防ぐことができた。
しかし04~05年にかけ、このパターンを崩す債券バブルが起こってしまった。その現象は後に、グリー ンスパン前FRB議長により「コナンドラム(謎)」と呼ばれた。景気は回復し、FRBは短期金利を引き上げているのに、長期金利が上がらないという状態で ある。景気が良く、長期金利が上昇しないので、アメリカ人は喜んで住宅を購入する。最終的にリーマン・ショックに至った不動産バブルの始まりである。
後にFRBの研究リポートでも指摘されているが、当時は日本や中国が大量に米国の長期国債を購入しており、長期金利が上昇しない大きな理由となっていた。
このような異常現象が起こったのだから、今後はその反動による逆の現象が起こるとみるのが自然だろう。すなわち、既に起こりつつあることだが、それほど景 気は回復していないのに長期金利が上昇してしまうという現象だ。ファンダメンタルズ面からも、需給面からも、債券(長期金利)を巡る環境は厳しいと言わざ るをえない。
ファンダメンタルズ面では、米国債の「質」が大幅に低下している。連邦債務は第2次大戦以来、初めてGDPの100%に達 する見込みで、政府系住宅金融機関(ファニーメイ、フレディマック)を全面保証することによって、これまでにはなかった住宅値下がりに伴う負担を負わされ ている。これらの変化を受けて、米国債がAAA格を失うのも時間の問題とみている。
需給面では、外国人による米国債購入が激減してい る。04年には発行金額のほぼ100%を引き受けていた外国人の比率は右肩下がりで低下し、09年末には35%となった。今のところ、市場に大きな影響が 出ていないのは連銀が21%もの国債を買い上げることによって帳尻を合わせているからだろう。しかし、出口戦略が模索されるなか、この先は連銀による国債 や住宅ローン証券の買い取りは期待できない。
一見、米国の住宅市場は安定してきているようにみえる。しかし、米国の代表的な住宅価格指数であるケースシラー住宅価格指数は、06年の最高値から32%下落した後は、たった3.9%反発しただけ。その状況で、既に長期金利が上昇を始めてしまっているのである。
■堀古 英司(ほりこ ひでじ)ホリコ・キャピタル マネジメント社長(NYでヘッジファンドを運用)











