エコノミストマネー:中国経済を牽引する 10億人の低所得者層
金融副大臣 大塚耕平の経済をみる「眼」(エコノミストマネー2010年3月号より)
昨年12月5日、中国共産党、中国政府、中国人民銀行(中央銀行)などの政策当局が、2010年のマクロ経済政策の基本方針を話し合う「中央経済工作会議」が開かれました。リーマン・ショック直後だった前回会議では、財政拡大と金融緩和を行う基本方針を決定。一方、今回は不動産バブルやインフレ懸念について議論し、バブル経済に警戒感を示しつつも、金融緩和の継続方針を決定しました。
具体的には、10年の銀行貸し出しの年間増加額目標を7兆5000億元(約100兆円)に設定。前年の5兆元の1.5倍、同国の国内総生産(GDP)の約2割に相当する規模です。この目標が実現すると、10年末の銀行貸出残高は47兆元に達し、1年間で25%以上増加します。
工作会議では、中国人民銀行がバブルを懸念して年間増加額目標を前年並み(5兆元)とすることを主張した模様ですが、共産党と政府が緩和策の継続で押し切ったようです。
中国政府は昨年9月、バブルの影響で過熱気味だった鉄鋼、セメントなど8業種を「過剰生産・重複建設業種」と位置づけ、土地供給や銀行貸し出しを管理。また投機的な不動産購入も抑制する姿勢を打ち出しました。工作会議はその姿勢をわずか3カ月で転換した形ですが、バブル崩壊よりも景気減速に対する懸念の方が勝り、巧みにバブルを維持していくことを決定したと言えます。
09年末の外貨準備高2兆3992億ドル(約216兆円)はもちろん世界一。2位・日本の1兆493億ドルの約2.3倍です。
本来、貿易黒字の影響によって人民元は値上がりするのが経済原則。しかし、中国政府は元安維持のため大量の元売り・ドル買い介入を断続的に実施し、一段と外貨が蓄積されています。貿易黒字と輸出下支えのための元売り・ドル買い介入で、外貨が積み上がっていくという「外貨蓄積のスパイラル状態」にあります。
しかも、この介入によって市場で売却された元は、市場に吸収されずに放置(非不胎化介入)される結果、市場に過剰流動性が蓄積し、金融緩和と同じ効果が発現しています。これら一連の動きは、昨年末の外貨準備高が前年比23.3%増、通貨供給量(マネーサプライ)が同27.7%増、銀行貸出残高は同31.7%増というデータが端的に示しています。
金融緩和の影響は不動産価格に波及し、昨年末の前年比上昇率は7.8%。これは中国全土の平均値ですが、北京、上海など大都市中心部は平均で同2から3割、優良物件は同5割近く値上がりしているようです。
◇日本の成功モデルを参考
中国の現状は、1980年代の日本と極めて似ています。中国は、高度成長期からバブルによる資産インフレで世界経済を席巻した80年代までの日本の成功モデルを参考にしているとも言われます。しかし、日本ではその後バブルが崩壊、その影響は今なお尾を引いています。
中国は今後どうなるでしょうか。
日本との違いは所得の非常に低い層が依然10億人近く存在すること。旺盛な購買意欲と上昇志向が経済を牽引し、低賃金労働力がコスト面で産業の国際競争力を支えています。また、経済発展が生み出す中間層が政治的民主化を促すという欧米諸国でみられた経験則も今のところ当てはまっていないようです。
世界の覇権は19世紀の英国、20世紀の米国から21世紀の中国にシフトしつつあるようにみえます。米国の同盟国で、中国の隣国である日本。巧みな国家運営が不可欠です。
■大塚 耕平(おおつか こうへい)1959年、名古屋市生まれ。83年早稲田大学政治経済学部卒業後、日銀に入行。在籍中に同大学院博士課程(マクロ経済学、財政金融論)修了。2001年から参院議員(現在2期目)。中央大学大学院、早稲田大学客員教授を兼務。民主党きっての経済政策通として知られる。
昨年12月5日、中国共産党、中国政府、中国人民銀行(中央銀行)などの政策当局が、2010年のマクロ経済政策の基本方針を話し合う「中央経済工作会議」が開かれました。リーマン・ショック直後だった前回会議では、財政拡大と金融緩和を行う基本方針を決定。一方、今回は不動産バブルやインフレ懸念について議論し、バブル経済に警戒感を示しつつも、金融緩和の継続方針を決定しました。
具体的には、10年の銀行貸し出しの年間増加額目標を7兆5000億元(約100兆円)に設定。前年の5兆元の1.5倍、同国の国内総生産(GDP)の約2割に相当する規模です。この目標が実現すると、10年末の銀行貸出残高は47兆元に達し、1年間で25%以上増加します。
工作会議では、中国人民銀行がバブルを懸念して年間増加額目標を前年並み(5兆元)とすることを主張した模様ですが、共産党と政府が緩和策の継続で押し切ったようです。
中国政府は昨年9月、バブルの影響で過熱気味だった鉄鋼、セメントなど8業種を「過剰生産・重複建設業種」と位置づけ、土地供給や銀行貸し出しを管理。また投機的な不動産購入も抑制する姿勢を打ち出しました。工作会議はその姿勢をわずか3カ月で転換した形ですが、バブル崩壊よりも景気減速に対する懸念の方が勝り、巧みにバブルを維持していくことを決定したと言えます。
09年末の外貨準備高2兆3992億ドル(約216兆円)はもちろん世界一。2位・日本の1兆493億ドルの約2.3倍です。
本来、貿易黒字の影響によって人民元は値上がりするのが経済原則。しかし、中国政府は元安維持のため大量の元売り・ドル買い介入を断続的に実施し、一段と外貨が蓄積されています。貿易黒字と輸出下支えのための元売り・ドル買い介入で、外貨が積み上がっていくという「外貨蓄積のスパイラル状態」にあります。
しかも、この介入によって市場で売却された元は、市場に吸収されずに放置(非不胎化介入)される結果、市場に過剰流動性が蓄積し、金融緩和と同じ効果が発現しています。これら一連の動きは、昨年末の外貨準備高が前年比23.3%増、通貨供給量(マネーサプライ)が同27.7%増、銀行貸出残高は同31.7%増というデータが端的に示しています。
金融緩和の影響は不動産価格に波及し、昨年末の前年比上昇率は7.8%。これは中国全土の平均値ですが、北京、上海など大都市中心部は平均で同2から3割、優良物件は同5割近く値上がりしているようです。
◇日本の成功モデルを参考
中国の現状は、1980年代の日本と極めて似ています。中国は、高度成長期からバブルによる資産インフレで世界経済を席巻した80年代までの日本の成功モデルを参考にしているとも言われます。しかし、日本ではその後バブルが崩壊、その影響は今なお尾を引いています。
中国は今後どうなるでしょうか。
日本との違いは所得の非常に低い層が依然10億人近く存在すること。旺盛な購買意欲と上昇志向が経済を牽引し、低賃金労働力がコスト面で産業の国際競争力を支えています。また、経済発展が生み出す中間層が政治的民主化を促すという欧米諸国でみられた経験則も今のところ当てはまっていないようです。
世界の覇権は19世紀の英国、20世紀の米国から21世紀の中国にシフトしつつあるようにみえます。米国の同盟国で、中国の隣国である日本。巧みな国家運営が不可欠です。
■大塚 耕平(おおつか こうへい)1959年、名古屋市生まれ。83年早稲田大学政治経済学部卒業後、日銀に入行。在籍中に同大学院博士課程(マクロ経済学、財政金融論)修了。2001年から参院議員(現在2期目)。中央大学大学院、早稲田大学客員教授を兼務。民主党きっての経済政策通として知られる。












