エコノミストマネー:世界の覇権構造に変化 問われる日本の戦略
金融副大臣 大塚耕平の経済をみる「眼」(エコノミストマネー2010年2月号より)
2009年12月1日、EU(欧州連合)の新基本条約「リスボン条約」が発効。新設の初代大統領(首脳会議の常任議長)にヘルマン・ファンロイパイ前ベルギー首相、初代外相(外交安全保障上級代表)に英国出身のキャサリン・アシュトン前欧州委員がそれぞれ就任。ジョゼ・バローゾ欧州委員長を加えた3トップ体制です。加盟27カ国、総人口5億人で、域内GDPは12兆ユーロ(約1600兆円)と米国を上回ります。
チャーチル元英首相が1946年に提唱した「欧州合衆国構想」に端を発し、51年ECSC(欧州石炭鉄鋼共同体)、57年EEC(欧州経済共同体)、67年EC(欧州共同体)、93年EUと進化。99年の経済通貨統合(単一通貨ユーロの導入)に続き、今回は政治統合を実現。国際社会は新たな段階に入りました。
国際社会の変化は新興国と先進国の間でも起きています。オイルショック後の75年、冷戦下の西側6カ国(米英仏独伊日)の首脳会議(サミット)がスタートし、翌年にはカナダが加わってG7体制が確立。以来四半世紀、G7は財務大臣・中央銀行総裁会議とサミットを舞台に、世界経済のかじを取ってきました。
その後、冷戦終結に伴い98年からはロシアが参加し、G8に発展。00年代に入ると、中国やインドなど新興国のプレゼンス(存在感)向上が著しく、09年9月のピッツバーグ・サミットでは今後、新興国を含めたG20(主要20カ国・地域)を国際交渉の中心とすることで合意しました。
◇G20、FTAなど新体制
日本はG7の一員ということで満足している場合ではなく、G20体制への対応を固めるのが急務です。
世界のGDPに占めるG7のシェアは80年代には50%超でしたが、IMF(国際通貨基金)の予測では、14年には36%に低下。一方、新興国は低コストの労働力を武器に急成長。中国、インドを含むアジア新興国の14年のシェアは25%超、世界の新興国全体では50%超となる見通し。「クオーター(世界GDPの4分の1)アジア」「エマージングハーフ(同2分の1の新興国)」の出現です。
このように、世界経済の覇権構造が変化するなか、通商関係を巡る動きにも要注意です。10年1月には中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)の間で原則ゼロ関税が実現し、中国を軸にアジアでの自由貿易協定(FTA)締結に向けた動きが加速。台湾と中国は、FTAに相当する両岸経済協力枠組み協議(ECFA)の交渉を開始するほか、韓国も中国とのFTA締結に向けた動きを速めています。台韓双方とも、中国を軸としたアジアFTA圏に乗り遅れることを懸念しての対応です。
一方、日本は後手に回っています。ASEANとはFTAを含む経済連携協定(EPA)を実現したものの、これに対する中国の対抗策がASEANとのFTA。必ずしも日本が優位とは言えません。むしろ、ASEANとしては、今後の高成長が期待できる中国とのFTAに重点を置く蓋然性が高いと予測すべきです。
日本は、韓国とのFTA交渉が中断中であるほか、台湾とは公式な外交関係が成立していないことからFTA交渉には至っていません。ASEANプラス3(日中韓)内のFTAも構想段階にとどまっています。
世界は米国、EU、中国を軸としたFTAなどによる「エンクロージャー(囲い込み)戦略」を競う局面となっています。G20、クオーターアジア、エマージングハーフ、そしてFTA。10年代は日本の国家戦略が問われる局面です。日本経済の行方にも大きく影響します。
■おおつか・こうへい 1959年、名古屋市生まれ。83年早稲田大学政治経済学部卒業後、日銀に入行。在籍中に同大学院博士課程(マクロ経済学、財政金融論)修了。2001年から参院議員(現在2期目)。中央大学大学院、早稲田大学客員教授を兼務。民主党きっての経済政策通として知られる
2009年12月1日、EU(欧州連合)の新基本条約「リスボン条約」が発効。新設の初代大統領(首脳会議の常任議長)にヘルマン・ファンロイパイ前ベルギー首相、初代外相(外交安全保障上級代表)に英国出身のキャサリン・アシュトン前欧州委員がそれぞれ就任。ジョゼ・バローゾ欧州委員長を加えた3トップ体制です。加盟27カ国、総人口5億人で、域内GDPは12兆ユーロ(約1600兆円)と米国を上回ります。
チャーチル元英首相が1946年に提唱した「欧州合衆国構想」に端を発し、51年ECSC(欧州石炭鉄鋼共同体)、57年EEC(欧州経済共同体)、67年EC(欧州共同体)、93年EUと進化。99年の経済通貨統合(単一通貨ユーロの導入)に続き、今回は政治統合を実現。国際社会は新たな段階に入りました。
国際社会の変化は新興国と先進国の間でも起きています。オイルショック後の75年、冷戦下の西側6カ国(米英仏独伊日)の首脳会議(サミット)がスタートし、翌年にはカナダが加わってG7体制が確立。以来四半世紀、G7は財務大臣・中央銀行総裁会議とサミットを舞台に、世界経済のかじを取ってきました。
その後、冷戦終結に伴い98年からはロシアが参加し、G8に発展。00年代に入ると、中国やインドなど新興国のプレゼンス(存在感)向上が著しく、09年9月のピッツバーグ・サミットでは今後、新興国を含めたG20(主要20カ国・地域)を国際交渉の中心とすることで合意しました。
◇G20、FTAなど新体制
日本はG7の一員ということで満足している場合ではなく、G20体制への対応を固めるのが急務です。
世界のGDPに占めるG7のシェアは80年代には50%超でしたが、IMF(国際通貨基金)の予測では、14年には36%に低下。一方、新興国は低コストの労働力を武器に急成長。中国、インドを含むアジア新興国の14年のシェアは25%超、世界の新興国全体では50%超となる見通し。「クオーター(世界GDPの4分の1)アジア」「エマージングハーフ(同2分の1の新興国)」の出現です。
このように、世界経済の覇権構造が変化するなか、通商関係を巡る動きにも要注意です。10年1月には中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)の間で原則ゼロ関税が実現し、中国を軸にアジアでの自由貿易協定(FTA)締結に向けた動きが加速。台湾と中国は、FTAに相当する両岸経済協力枠組み協議(ECFA)の交渉を開始するほか、韓国も中国とのFTA締結に向けた動きを速めています。台韓双方とも、中国を軸としたアジアFTA圏に乗り遅れることを懸念しての対応です。
一方、日本は後手に回っています。ASEANとはFTAを含む経済連携協定(EPA)を実現したものの、これに対する中国の対抗策がASEANとのFTA。必ずしも日本が優位とは言えません。むしろ、ASEANとしては、今後の高成長が期待できる中国とのFTAに重点を置く蓋然性が高いと予測すべきです。
日本は、韓国とのFTA交渉が中断中であるほか、台湾とは公式な外交関係が成立していないことからFTA交渉には至っていません。ASEANプラス3(日中韓)内のFTAも構想段階にとどまっています。
世界は米国、EU、中国を軸としたFTAなどによる「エンクロージャー(囲い込み)戦略」を競う局面となっています。G20、クオーターアジア、エマージングハーフ、そしてFTA。10年代は日本の国家戦略が問われる局面です。日本経済の行方にも大きく影響します。
■おおつか・こうへい 1959年、名古屋市生まれ。83年早稲田大学政治経済学部卒業後、日銀に入行。在籍中に同大学院博士課程(マクロ経済学、財政金融論)修了。2001年から参院議員(現在2期目)。中央大学大学院、早稲田大学客員教授を兼務。民主党きっての経済政策通として知られる











